会社設立の手続きや作業には多くの書類が必要となり、その準備や手続きに戸惑う方も少なくありません。
本記事では、会社を設立する際に法務局へ提出が求められる主要な書類について、その内容や書き方のポイント、専門家へ依頼する場合などを解説します。
さらに、これらの書類をどのように提出するのか、直接窓口へ持参する方法、郵送による申請、そしてオンラインでの手続きの流れと注意点について理解を深めることで、スムーズな手続きが可能になります。
また、会社設立後に、登録した情報に変更が生じた際の対応についても触れます。将来的に起こる可能性のある手続きについても事前に把握しておきましょう。
そして、会社設立に必要な書類を準備する上での注意点、準備にかかる期間や費用、会社の登録日設定の考え方についても徹底解説。これらの情報を踏まえ、計画的に会社設立の準備を進めていきましょう。
会社設立に必要な書類とその内容や書き方
会社を設立する際には、法務局にさまざまな書類を提出する必要があります。これらの書類に不備があると設立手続きができません。
ここでは、会社設立に必要な主要な10種類の書類について、その内容と書き方のポイントを解説します。
1. 登記申請書
登記申請書は、会社設立の登記を申請するためのもっとも重要な書類です。会社の商号、本店所在地、設立の目的、資本金の額、役員の氏名や住所など、会社の基本的な情報を記載します。
書き方のポイント
・法務局が提供する申請書の様式を正確に用いて、会社の情報を漏れなく記載します。
・会社の商号、本店所在地、事業目的などは、その後の事業活動に大きく影響するため、慎重に決定し、誤りがないように記載してください。
・申請書には、会社の代表者が署名し、実印を押印します。
2. 登録免許税納付用台紙
登録免許税は、会社設立の際に国に納める税金です。登録免許税納付用台紙は、この税金を納付する際に使用する台紙です。
書き方のポイント
・台紙に収入印紙を貼り付けて納付します。
・収入印紙は、法務局や郵便局などで購入できます。
・納付する税額は、会社の資本金額によって異なります。
3. 定款
定款は、会社の組織や運営に関する基本的なルールを定めた、会社の根幹になる重要な書類です。会社の商号、事業目的、本店所在地、設立の方法、役員に関する事項、会計に関する事項などを記載します。
書き方のポイント
・定款には、法律で定められた絶対的記載事項、相対的記載事項、任意的記載事項を記載する必要があります。
・株式会社の定款は、公証人の認証を受ける必要があります。
・定款は、会社の設立後も重要な文書となるため慎重に作成してください。
4. 発起人の決定書
発起人の決定書は、会社設立の発起人全員の意思決定を示す書類です。定款の承認、設立時役員の選任、資本金の払込口座など、会社設立に必要な事項を決定したことを証明します。
書き方のポイント
・発起人が複数いる場合は、全員が署名押印します。
・決定事項は、定款の内容と矛盾がないように記載してください。
5. 設立時取締役の就任承諾書
設立時取締役の就任承諾書は、会社の設立時に取締役に就任する人が、その役職に就くことを承諾する意思を示す書類です。
書き方のポイント
・取締役に就任する者が署名し実印を押印します。
・就任する取締役の氏名、住所などを正確に記載してください。
6. 設立時代表取締役の就任承諾書
設立時代表取締役の就任承諾書は、会社の設立時に代表取締役に就任する人がその役職に就くことを承諾する意思を示す書類です。
書き方のポイント
・代表取締役に就任する人が署名し実印を押印します。
・設立時取締役かつ設立時代表取締役である場合には必要ありません。
7. 設立時取締役の印鑑証明書
設立時取締役の印鑑証明書は、設立時取締役に就任する人の個人の実印が、市区町村に登録されているものであることを証明する公的な書類です。
書き方のポイント
・発行から3カ月以内のものを提出する必要があります。
・取締役に就任する者全員の印鑑証明書が必要です。
8. 資本金の払込みがあったことを証する書面
資本金の払込みがあったことを証する書面は、発起人が出資した資本金が正しく払込まれたことを証明する書類です。
書き方のポイント
・口座への払込みを証明する書類として、通常は通帳のコピー(通帳の表紙・1ページ目・振込が記帳されたページをとじたもの)を添付します。
9. 印鑑届出書
印鑑届出書は、設立する会社の代表者印(会社実印)を法務局に登録するための書類です。会社設立後、契約書への押印やさまざまな手続きで使用する重要な印鑑となります。
書き方のポイント
・登録する印鑑の印影を鮮明に押印します。
・会社の商号、本店所在地、代表者の氏名、住所などを正確に記載してください。
・個人の実印とは異なる、会社専用の印鑑を用意する必要があります。
10. 「登記すべき事項」を記載した書面
「登記すべき事項」を記載した書面を、電子媒体やCD-Rなどに記録して提出するものです。
書き方のポイント
・会社の事業目的の詳細や、役員の氏名、住所、就任年月日などをテキストファイルで作成し、電子媒体に記録します。
・法務局の指示に従い、正しい形式で作成する必要があります。
会社設立に必要な書類(登記書類)の提出方法
会社設立に必要な登記書類を作成したら、法務局への提出を行います。提出方法は、主に3つの方法があります。それぞれの方法には特徴があり、自身の状況や都合に合わせて選択しましょう。ここでは、それぞれの提出方法について注意点を含めて解説します。
法務局に直接持って行く
作成した登記書類一式を、法務局の登記申請窓口に直接持参して提出する方法です。
この方法の最大のメリットは、その場で書類に不備がないかを確認してもらえる可能性が高いことです。もし書類に不備があった場合でも、その場で訂正できるため、スムーズに手続きを進められます。
また、登記官に直接質問できるため、不安な点や疑問点をすぐに解消できるでしょう。受付時間は法務局によって異なるので、事前にウェブサイトなどで確認しておきます。
提出書類の内容に問題がない場合、申請から1週間~10日程度で法人登記の手続きが完了します。
郵送する
作成した登記書類一式を、書留郵便で郵送する方法です。郵送は、法務局に出向く手間や時間を省くことができます。遠方に住んでいる場合や窓口に行く時間がない場合に便利です。
郵送する際には、いくつかの注意点があります。まず、必ず配達状況を追跡できる「簡易書留」や引受を記録する「特定記録郵便」などで送りましょう。これは、郵便物の配達記録を残し、万が一の紛失を防ぐためです。
書類に不備があった場合、法務局から連絡があり、再度書類を提出する必要があるため余計な時間と手間がかかってしまいます。提出日については、法務局に書類が到着した日が登記申請日となります。
窓口で提出した場合と同様に、1週間~10日程度で手続きが完了します。もしも提出書類に不備があれば、郵送で訂正することも可能です。
オンラインで提出する
登記・供託オンライン申請システムを利用して、インターネット経由で登記申請を行う方法です。法務局の登記・供託オンライン申請システム「登記ねっと 供託ねっと」を利用します。
自宅やオフィスなど、場所を選ばずに24時間いつでも申請できます。申請に必要なソフトウェアや電子証明書の準備は必要になりますが、窓口に行く手間が省けます。
初めてオンライン申請を行う場合は、事前に操作マニュアルをよく読んだり、操作を覚えたりとハードルが高いかもしれません。
不備があった場合、「登記ねっと 供託ねっと」に通知が届くため、オンライン上で補正し提出します。または、法務局に直接再提出するか、郵送でも訂正が可能です。
申請後も、法務局からの連絡に対応する必要があるため、登録した連絡先は常に確認できるようにしておきましょう。
登録後に変更が生じた場合
会社を設立した後も、事業を進めていく中でさまざまな変更が生じることがあります。これらの変更の中には、法務局への登記が必要となるものがあります。
ここでは、会社設立後に生じる可能性のある主な変更と、その手続きについて解説します。
会社形態の変更の場合
会社形態の変更は、組織再編行為を伴うことが多く、手続きも複雑になる場合があります。例えば、株式会社から合同会社へ、またはその逆への変更などです。「株式の分割」「会社の分割」「会社の吸収・合併」「会社の廃業・解散」も同様に変更登記が必要です。
変更後の会社の設立登記と変更前の会社の解散登記を同時に行うなど、必要な手続きや提出書類も多く、登録免許税もかかります。
手続きには専門的な知識が必要となるため、司法書士などの専門家に相談しながら進めることをおすすめします。また、税務上の問題も発生する場合もあるため、税理士への相談も検討しましょう。
事業の立ち上げ・撤退(事業目的の変更)の場合
事業の拡大や縮小、新たな事業への参入などにより、会社の事業目的を変更する場合があります。
事業目的の変更は、株主総会(株式会社の場合)または社員総会(合同会社などの場合)の決議によって決定されます。
決議後、事業目的の変更登記申請書を作成し、議事録などの必要書類とともに法務局へ提出します。登録免許税は1件3万円となります。事業目的の追加や削除を行う際には、慎重な検討が必要です。
会社の所在地の移転の場合
会社の本店の所在地を移転した場合も、法務局への登記が必要です。
同一の法務局の管轄内で移転する場合(管轄内移転)と、異なる法務局の管轄へ移転する場合(管轄外移転)で、手続きが異なります。
必要書類として、本店移転変更登記申請書や取締役会議事録(合同会社の場合は業務執行社員の決定書)などがあります。これはどちらの移転先でも共通です。
本店移転の登録免許税は、同一法務局の管轄内であれば3万円ですが、異なる管轄の法務局に移転する場合は、新旧の法務局それぞれに納付が必要となるため、合計6万円となります。
会社の所在地は、取引先などの信用にも影響を与える重要な情報です。移転後、速やかに登記手続きを行うと同時に、関係各方面への住所変更の連絡も忘れずに行いましょう。
必要書類の作成等の注意点
必要書類の作成だけでなく、準備にかかる期間や費用、そして会社の登録日についても考慮する必要があります。ここでは、3つのポイントに絞り、注意すべき点について解説します。
書類の準備にかかる期間
定款の作成や役員の選任など、関係者との調整が必要な事項が多いほど、時間がかかるでしょう。定款作成や資本金の払い込み、書類の作成などを含めて、期間は数週間から、慣れない場合や仕事をしながらの場合は余裕を持って1カ月程度を見ておくとよいでしょう。
特に、初めて会社設立を行う場合は、書類の書き方や必要な手続きに戸惑うことも少なくありません。法務局のウェブサイトや専門家の情報を参考にしながら、余裕を持って準備を進めることが重要です。
もし、書類の作成に不安がある場合は、専門家に相談することも有効です。専門家のサポートを受けることで、書類の不備を防ぎ、手続きをスムーズに進めることができます。
登録や書類にかかる費用
株式会社の設立には、公証役場での定款認証と、法務局での設立登記費用がかかります。定款認証費用は3~5万円、謄本手数料は約2千円です。紙媒体の定款には4万円の印紙代が必要ですが、電子定款の場合は不要です。法務局への設立登記には、登録免許税として15万円または資本金の0.7%のいずれか高いほうが課税されます。これらの費用を合計すると、株式会社の設立には通常約24万2千円程度の費用を見込む必要があります。
また、合同会社設立では定款認証が不要なため、公証役場での費用はかかりません。定款には、原則4万円の収入印紙代が必要です。登録免許税は株式会社より安く、6万円または資本金の0.7%のいずれか高いほうとなります。資本金約857万円以下であれば6万円で済み、設立費用の合計は通常10万円となります。
先述したように、いずれも電子定款を利用すれば印紙代を節約できますので、検討してみましょう。
会社の登録日の設定
会社の登録日は、法務局に設立登記の申請を行った日が原則となります。
書類に不備があった場合などは、訂正が必要となり、登録日が遅れる可能性があります。また、希望する登録日がある場合は、事前に法務局の繁忙期などを考慮し、余裕を持って申請手続きを行うことが重要です。
登録日は、会社の設立年月日として登記簿に記載される重要な情報となるため、慎重に検討しましょう。
作成を専門家に依頼する場合
会社設立の手続きは複雑で、専門知識が必要となる場面が多くあります。そのため、専門家に依頼することで、スムーズな手続きが可能になります。それぞれの専門分野と依頼するメリットを解説します。
司法書士
司法書士は登記の専門家であり、会社設立時の登記申請は司法書士の独占業務です。設立時の登記に必要な書類の作成、定款認証、法務局への登記申請の代行を依頼できます。会社設立の手続きを代行してもらうと考えた際、最初に候補となる依頼先です。
行政書士
行政書士は、許認可申請の専門家です。会社設立時に、飲食店や建設業など許認可が必要な事業を行う場合はスムーズな手続きが可能です。しかし、登記申請は司法書士の独占業務となるため、行政書士に依頼する場合は、司法書士と連携している事務所を選ぶことをおすすめします。
税理士
税理士は税務、会計の専門家です。会社設立前から税務に関するアドバイスを受けることができます。税務顧問契約を結ぶことで、顧問料が定期的にかかりますが、設立後の税務面も安心して任せることができるでしょう。
まとめ
会社設立に必要な書類やその内容と作成のポイント、そして提出方法について解説しました。
登記申請書をはじめとする各種書類は、会社の基本情報を法的に登録し、会社の根幹とする重要なものです。それぞれの書類が持つ意味合いを理解し、正確に準備を進めることが、スムーズな設立手続きのポイントとなります。
提出方法には、法務局への直接持参、郵送、オンライン申請の3つの選択肢があります。自身の状況や書類の準備状況に合わせて、最適な方法を選択しましょう。
会社設立の手続きには手間がかかり、ミスや書類の不備も起こりやすいものです。スムーズな会社設立を実現するために、手続きを専門家に依頼することも検討してみてはいかがでしょうか。
会社法人センターは、全国最安の8,360円(税込)にて会社設立の手続き代行を承っております。書類と電子定款の作成には司法書士と行政書士が携わり、設立後の顧問契約の強制といったこともございませんので、安心してご依頼いただけます。