沖縄県で会社設立|方法・メリット・使いたい制度を紹介

沖縄県は美しい自然に恵まれた日本でも有数のリゾート地として知られる場所です。しかし、実は起業を志す人にとっても魅力的な場所であり、毎年たくさんの人が会社を設立して自身のビジネスに取り組んでいます。

この記事では、沖縄県での会社設立について、方法やメリット、使いたい制度について解説するので参考にしてください。

 

沖縄県で会社を設立する3つの方法

結論からいうと、沖縄県だからといって特殊な方法を使わないと会社を設立できないということはありません。基本的にはほかの都道府県と同じく、所定の手続きを踏めば問題ないと考えてください。

ここでは、沖縄県で会社を設立する方法として、以下の3つをメリット・デメリットにも触れながら解説します。

 

無料の会社設立サービスを使う

1つ目の方法は「無料の会社設立サービスを使う」ことです。無料の会社設立サービスとは、会計ソフトなどを販売する会社が提供しているサービスの一種です。画面の指示に従って必要事項を入力していくと、必要な書類が作成でき、オンラインで公証役場や法務局への申請まで済ませられます。

メリットとしては、インターネット環境があれば無料で利用できる気軽さです。会員登録などが必要になることが多いものの、サービスの利用に当たって料金はかかりません。

 

しかし、デメリットというよりは注意点として知っておくべきことがあります。

会社設立サービスは、あくまで定款など必要となる書類の作成を支援するサービスに過ぎません。登録免許税や定款の認証にかかる収入印紙代(電子定款の場合は不要)、謄本手数料は発生するので、完全に無料で設立できるわけではないことに注意してください。

加えて、サービス運営会社が提携する行政書士を利用することになるため所定の手数料が発生します。ただし、所定のサービスを利用する契約を結べば、手数料が割引になることも多いため、事前に確認しましょう。

これらの点をまとめると、サービスによっても具体的な金額は異なりますが、株式会社を設立する場合は約20万円、合同会社を設立する場合は約6万円がかかります。

 

法務局のWebサイトを見て自分で進める

2つ目の方法は「法務局のWebサイトを見て自分で進める」ことです。法務局では「法人設立ワンストップサービス」という名称で、マイナポータルを通じて法人設立に必要な手続きを行い、書類の提出まで一気に行えるサービスを運営しています。

メリットは、国が提供しているサービスであり、信頼性が非常に高いことです。一方、デメリットとしては説明が専門的でやや分かりづらい点が挙げられます。これまでに法務の仕事をしたことがあるなど、ある程度専門的な用語でも読み解ける自信があるなら問題ありませんが、まったく経験や知識がないと難しいかもしれません。

また、先ほどの会社設立サービスの場合と同様、登録免許税や定款の認証にかかる収入印紙代(電子定款の場合は不要)、謄本手数料がかかります。

 

専門家に相談する

3つ目の方法は「専門家に相談する」です。会社を設立する際は、司法書士、税理士、行政書士、中小企業診断士など、幅広い専門家が相談に乗ってくれます。ただし、それぞれの専門家によっても専門とする分野や対応してくれる業務が異なるため、違いを理解しておきましょう。
 

名称 基本業務 具体的な起業支援
司法書士 不動産登記、会社設立登記など 会社設立時の設立登記、定款の作成・認証の支援
税理士 税務申告・相談、決算書作成、税務調査対応 開業届提出の支援、起業後の会計・税務業務支援
行政書士 官公庁等への各種許認可申請、契約書作成 起業に必要な営業許可・認可の申請、定款作成支援
中小企業診断士 経営コンサルティング、経営計画の策定、補助金・助成金の申請支援 事業計画書の作成、補助金・助成金・融資に関するアドバイス

 

メリットは、自分が抱えている悩みに即した専門家に依頼すれば、基本的にすべてを任せられることです。自分がやるべきことは、専門家とやり取りして必要な書類を出すだけなので、負担を大幅に軽減できます。

一方、デメリットとして相応の報酬を支払わなくてはいけないため注意が必要です。具体的な金額は依頼する業務や専門家によっても異なるため一概にはいえませんが、数十万円の出費になる可能性もあります。出費を抑えたいなら、自分でできそうなところはやった上で、本当に難しい部分だけを依頼するなど、工夫が必要です。

 

沖縄県で会社を設立するメリット5つ

沖縄県で会社を設立することにはさまざまなメリットがあります。ここでは、沖縄県で会社を設立する具体的なメリットとして、以下の5点について解説します。

 

メリット1.税制上の優遇が大きい

1つ目のメリットは「税制上の優遇が大きい」ことです。沖縄には以下の6つの経済特区がつくられており、該当する地域で会社を設立し事業を行えば、税制上の優遇を受けられる可能性があります。

 

名称 概要
国際物流拠点産業集積地域 那覇・浦添・豊見城・宜野湾・糸満地区、うるま・沖縄地区、南風原・八重瀬地区が該当。製造業や倉庫業など国際物流拠点産業を営むなど所定の条件を満たせば、所得控除など国税・関税・地方税の特例措置が利用できる。

※ただし、こん包業は特例措置の一部対象外となる

情報通信産業振興地域

 

電気通信業、ソフトウェア業を営むなど所定の条件を満たせば、投資税額控除など国税・地方税の特例措置が利用できる。那覇市、宜野湾市など沖縄県内24市町村が指定済。

 

情報通信産業特別地区

 

データセンターや情報システム開発業など、特定情報通信事業を専ら営む企業を対象に、法人税や事業税等の優遇措置が受けられる。那覇市・浦添市全域、名護市・宜野座村全域、うるま市全域が指定済。
経済金融活性化特別地区

 

金融関連産業、情報通信関連産業など対象の産業を営む企業に対し、投資税額控除など国税・地方税の税制優遇策の利用を認める制度。2025年4月現在、名護市が指定済。
産業イノベーション促進地域制度

 

DXの推進による開発力・生産技術等の向上を目指すなど、沖縄振興特別措置法等にて指定される所定の条件を満たす企業に対し、税制上の特例措置や中小企業信用保険法等の特例の利用を認めた制度。沖縄県内の全域(41市町村)で、製造業をはじめとした17事業が対象となる。
観光地形成促進地域

 

スパ施設、水族館など所定の対象施設を開設する企業に対し、税制上の特例措置や中小企業信用保険法等の特例の利用を認めた制度。沖縄県内全域が対象となる。

 

メリット2.アジア圏を中心に海外進出がしやすい

2つ目のメリットは「アジア圏を中心に海外進出がしやすい」ことです。沖縄のメイン空港である那覇空港からは、ソウルや台北、香港、マニラなどのアジアの主要都市に4時間程度でアクセスできるという強みを有しています。沖縄で会社を設立し、軌道に乗ればこれらのアジアの主要都市もターゲットに事業を広げていくことが可能です。

海外進出を目指すからといって、海外で会社を設立するのは、法律や税制がまったく違うために手続きが煩雑な上に、かかる費用も高額になる可能性があるのでハードルが高くなっています。しかし、沖縄はあくまでも日本国内であるため、手続きや費用面ではほかの都道府県と大差はありません。結果的に負担を減らしつつ海外進出を見据えて事業を始められます。

 

メリット3.商品に付加価値が付けられる

3つ目のメリットは「商品に付加価値を付けられる」ことです。日本の製品は、世界のさまざまな国・地域で「品質が高く、安心できる」というプラスのイメージを持たれています。

また、日本原産地証明を取得することで自由貿易協定制度を使えるようになるため、関税削減などのメリットを享受することが可能です。もちろん、沖縄も日本の一部である以上、所定の条件を満たすことで日本原産地証明を取得できます。「Made In Japan」を取得することは、マーケティングと税制上の両面からプラスになるでしょう。

 

メリット4.災害時のリスク分散になる

4つ目のメリットは「災害時のリスク分散」になることです。日本は世界有数の地震大国であり、本土で地震があった場合、同時被災する可能性があります。しかし、沖縄は本土からかなりの距離があるため、本土で地震があったとしても影響は及びにくいはずです。

 

メリット5.若いスタッフを確保しやすい

5つ目のメリットは「若いスタッフを確保しやすい」ことです。沖縄県は、15歳未満人口の割合が75歳以上の人口の割合を上回る唯一の都道府県です。今後も若い人材に働いてもらうことが十分に期待できるという、ほかの都道府県にはない強みが沖縄県にはあります。

また、沖縄県は若年層(15歳から29歳)の失業率が6.5%と、全国平均の4.1%に比べ高い傾向なのも事実です(数値はいずれも令和5年時点)。

出典:令和6 年度沖縄労働局の取組(案)(沖縄労働局労働行政運営方針)~ 誰もが豊かで安心して働き、働き続けることができる社会の実現を目指して~|厚生労働省沖縄労働局

そのため、沖縄県で起業し、特に若年層の雇用に力を入れるのは、社会貢献という意味からも有意義といえます。

 

沖縄県で会社を設立する際に使いたい制度

もともと沖縄は起業が盛んな土地であり、さまざまな市町村が独自の制度を設けて支援に当たっているのが特徴です。ここでは、沖縄県の市町村の企業に対する支援制度を3つ紹介します。

 

那覇市「なはし社会地域課題解決型起業支援事業」

那覇市が実施する「なはし社会地域課題解決型起業支援事業」は、同市が抱える社会問題・地域課題の解決を目的に起業する場合、最大100万円までの補助が受けられる制度です。これから起業する人、もしくは創業5年未満の人に対し、以下の支援を行います。

 

  • 人件費や備品費など所定の経費の3分の2以内(上限100万円)の補助
  • スタートアップ起業家等による相談支援
  • 連携イベントへの参加を通じた広報・周知

 

参照:令和6年度 なはし社会地域課題解決型起業⽀援事業 ⽀援(補助)事業者募集要項|那覇市経済観光部商工農水課

なお、補助を受けるためには一次審査(プレゼン審査)および二次審査(書類審査)を受けなくてはいけません。入念な準備が必要になるため、募集要項を入念に確認した上で、まずは個別相談を受けましょう。

 

沖縄市「市民雇用奨励金」

沖縄市では「市民雇用奨励金」として、沖縄振興特別措置法の対象事業所で、同市市民を雇用した企業に対し、10万円(1名あたり)の奨励金を給付しています。

同市内で会社を設立し、スタッフを雇用して事業を展開する予定があるなら、ぜひ活用しましょう。

参照:起業家にやさしい町。沖縄市 | 沖縄市役所

 

宮古島市「6次産業化・地産地消支援事業補助金」

宮古島市では「6次産業化・地産地消支援事業補助金」として、同市内で農水産物の加工・販売に取り組むなど、一定の条件を満たす個人、法人、団体に対し、対象経費(機材導入に要する経費(消費税を除く))の50%以内(上限200万円)の補助を行っています。同市の食材を使ったレトルト食品の開発・販売をするなど、食にまつわるビジネスをする予定があるなら活用を検討すべきです。

参照:宮古島市6次産業化・地産地消支援事業補助金について|市の組織|宮古島市

 

【参考】実は沖縄は日本一起業が盛ん

利用できる制度と直接の関係はありませんが、実は沖縄県は日本で一番起業が盛んな場所でもあります。中小企業庁「2023年版中小企業白書」によれば、沖縄県は開業率が7.1%と全国一位の栄誉に輝きました。2位の福岡県が5.4%、全国平均が4.4%であることを考えると、沖縄県は起業が盛んな場所といって過言ではありません。

起業を志す人が多い以上当然といえば当然かもしれません。しかし、本当に重要なのは「自分が立ち上げた企業ができるだけ長く続くこと」であるため、入念な準備をするとともに、起業後も情報収集を常に重ね、よりよい方法を探る努力をしましょう。

 

まとめ

沖縄県で会社を設立する場合でも、基本的な手順はほかの都道府県となんら変わりはありません。しかし、沖縄県ならではの有利な点として、税制上の優遇が受けやすいことや、市町村独自の支援策が充実していることが挙げられます。また、起業を選択する人も多いため、自分から積極的に働きかければ、苦楽を共にでき、アイデアを出し合える起業仲間に出会えるかもしれません。

起業を志しているものの、まだどこで会社を設立するか決めていない場合は、あえて沖縄県を候補の一つに入れてみましょう。

 

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監修者情報
行政書士 井坂信彦

行政書士 井坂信彦
(行政書士登録番号10302729)

行政書士井坂事務所代表。