会社を設立する方法自体は、基本的に日本国内であればどこでも同じです。神戸だからと特別なことをする必要はありませんが、自治体の制度を活用すればスムーズに進められるので、ぜひチェックしましょう。今回の記事では、神戸で会社を設立する方法と、活用できる制度や専門機関について詳しく解説します。神戸で起業を予定している方はぜひチェックしてください。
神戸で会社を設立する方法は?
神戸で会社を設立する方法として「自分で手続きをする」「会社設立サービスを使う」「専門家に相談する」などの方法が考えられます。ここではそれぞれの方法の概要およびメリット・デメリットについて詳しく解説します。
①自分で手続きをする
1つ目の方法は「自分で手続きをする」ことです。法務局のWebサイトには、株式会社・合同会社の設立登記をはじめとした、商業・法人登記申請手続が詳細に案内されています。また、マイナンバーカードがあれば「法人設立ワンストップサービス」を利用し、法人を設立するために必要な書類を自宅から提出することが可能です。
この方法には、後述する「無料の会社設立サービスを使う」「司法書士などの専門家に相談する」に比べ、費用を非常に安く抑えられるというメリットがあります。しかし、内容がかなり専門的であり、法律の知識がないと難しい部分もあるのが事実です。自分で問題なく進められそうなら使ってもかまいませんが、難しい場合は別の方法で進めることも検討しましょう。
②無料の会社設立サービスを使う
2つ目の方法は「無料の会社設立サービスを使う」ことです。主に、会計ソフトを運営する企業が利用者獲得のための施策の一環として、無料の会社設立サービスを運営しています。所定のフォームに従って入力するだけで必要書類が完成するため、非常に手軽に使えるのがメリットです。ただし、利用に当たっては定款作成手数料・印紙代として本来なら5,000円程度かかるものの、運営会社が提供する所定のサービスを利用すれば無料になるというビジネスモデルが取られていることが多くなっています。つまり「なんらかのサービスを契約するという条件を満たせば無料になる」という仕組みであるため、その点に抵抗を感じるなら避けたほうが無難です。
③司法書士などの専門家に相談する
3つ目の方法は「司法書士などの専門家に相談する」ことです。この方法には、手厚いアドバイスやサポートを受けられるという大きなメリットがあります。自分でやるべきことは指示されたとおりに書類を準備することと、専門家とのやり取りを続けることだけなので、3つの方法の中ではもっとも負担が少ないのがメリットです。ただし、依頼に当たって相応の報酬が必要になるため、費用面での負担が大きいことがデメリットとなります。また、人間としての相性のよさも問われるため、自分に合った専門家を見つけるのが、この方法の成否を握る部分もあるでしょう。
神戸で会社設立をするならどの専門家に相談すべき?
実際のところ、会社を設立するためにはさまざまな手続きが必要になるため、自分だけで進めるのは難しい部分があります。積極的に専門家を頼ることも必要ですが、どのように選べばいいか分からないかもしれません。ここでは会社設立について相談できる専門家について、特徴とともに詳しく解説します。
弁護士
ビジネスの適法性や契約書、約款の確認を依頼したい場合は、弁護士に相談しましょう。法律の専門家として、トラブルが起きないよう、どこに気を付けるべきかをアドバイスしてもらえます。また、会社を設立し、ビジネスを展開していく上で生じるトラブルや、法的リスクについても相談に乗ってもらえるのが弁護士ならではの強みです。
もちろん、行政書士や司法書士が主に手掛ける定款の作成・認証、法人登記、許認可申請の代行などを弁護士に依頼することもできます。ただし、高度な専門性を有する職業ゆえ、費用が高くなりがちなことから、これらの業務は行政書士や司法書士に依頼するのが現実的です。具体的な相談・依頼内容によっても異なりますが、最低でも10万円程度の報酬が発生すると考えましょう。
行政書士
行政書士は、市区町村役場や官公庁などに提出する書類の作成を主に手掛ける専門家です。会社を設立する際は、定款の作成・認証の代行、許認可申請書類の作成およびその手続きの代行を依頼できます。特に、展開する予定のビジネスが飲食業や旅行業など、許認可の取得が必要なものであれば、まず行政書士に相談するのが現実的な選択肢です。
ただし、後述する司法書士とは違い、行政書士が法人登記を代行することは法律上できません。提携する司法書士を紹介してもらうか、自分で進める必要があります。行政書士への報酬は、内容によって上下はあるものの、2~5万円程度が一般的です。
司法書士
登記のエキスパートといえるのが、司法書士です。登記申請の代行ができるのは弁護士か司法書士のみとなっています。そのため会社設立の際も、定款作成・認証、法人登記の申請代行まですべて任せられるのは、司法書士ならではの大きな強みでしょう。司法書士の報酬は、設立する事業によって上下はあるものの、7~10万円程度が一般的となっています。
公認会計士・税理士
公認会計士・税理士に会社設立について相談することもできます。公認会計士は会計の専門家であり、会社設立に当たっては、設立後の財務・会計分野での相談やコンサルティングを依頼することが可能です。一方、税理士は税務の専門家であるため、設立に当たって行わなくてはいけない手続きや、資本金の額や事業年度の決め方など、税務に関する相談を幅広く受け付けてくれます。
なお、公認会計士は一定の条件を満たせば税理士として業務を行うことも可能です。報酬ですが、依頼する内容次第の部分はあるものの、月額顧問料は2~4万円程度が一般的となっています。ただし顧客獲得の施策として、会社設立に当たっての相談は無料で受けていることもあるため、一度確認してみましょう。
中小企業診断士
中小企業診断士は、主に中小企業の経営に対して診断や支援、助言を行う国家資格です。簡単にいうと「国が認めたプロの経営コンサルタント」といったところでしょう。会社設立に当たっては、事業開始後に利益を最大化するための施策の提案および実行の支援を行う役回りを担います。報酬はどのような業務を依頼するかによっても大きく異なりますが、カウンセリング・コンサルティング(経営指導)の場合、1回10万円程度が一般的です。
神戸で会社設立について相談できる機関はある?
いきなり専門家に相談するのはハードルが高いという場合は、公的な機関に頼るのも重要です。ここでは、神戸で会社を設立する際に相談できる機関について、特徴も交えながら詳しく解説します。
商工会議所・商工会
商工会議所および商工会は、法律に基づいて設置される起業支援や事業支援を行っている経済団体です。ただし、根拠になる法律や管轄官庁・地域が異なるため、違いを理解しておきましょう。
区分 | 商工会 | 商工会議所 |
根拠法 | 商工会法 | 商工会議所法 |
管轄官庁 | 経済産業省 中小企業庁 | 経済産業省 経済産業政策局 |
地区 | 主として町村の区域 | 原則として市の区域 |
会員に占める小規模事業者の割合 | 9割を超える | 約8割 |
より小規模なのが商工会と覚えておけば問題ありません。
商工会議所・商工会のメリットとして、会社設立後の経営相談もできることが挙げられます。また、定期的にセミナーや交流会などのイベントを開催しており、参加することで人脈づくりも可能です。
ただし、利用に当たっては年会費や入会金を払って会員になる必要があります。また、相談は受け付けてくれるものの、書類の作成や手続きの代行は受け付けてくれない点に注意が必要です。
神戸で会社設立するなら「神戸開業支援コンシェルジュ」を使おう
神戸で会社を設立し、ビジネスをスタートさせる際に利用したいのが公益財団法人こうべ産業・就労支援財団が提供する「神戸開業支援コンシェルジュ」です。ここでは、神戸開業支援コンシェルジュで何ができるのかを詳しく解説します。
最初に個別創業相談を受けよう
まず、事業を始める際には個別創業相談を予約しましょう。中小企業診断士、税理士、司法書士、社会保険労務士等の資格を持つコーディネータに、起業に関するさまざまな相談をすることができます。公式Webサイトの予約フォームから申し込みが可能です。なお、初回の相談は対面のみとなっていますが、2回目以降はオンライン・対面から好きな方法を選べます。
必要な知識は創業基礎セミナーで学ぼう
会社を設立し、経営していくためにはさまざまな分野の知識が必要になります。特に欠かせないのが以下の4分野の知識です。
- ・税務・資金調達
- ・法人・設立手続
- ・社会保険・雇用
- ・販路開拓
「神戸開業支援コンシェルジュ」で開催されている創業基礎セミナーでは、これらの4分野について分かりやすく学べるセミナーを定期的に開催しています。起業をしたくても何から始めればいいか分からないという場合も、積極的に活用しましょう。
創業基礎セミナーを受講すれば税金・融資面で優遇される
創業基礎セミナーを受講することには、知識が増える以外のメリットがあります。前述した4分野のセミナーをすべて受講するなど所定の条件を満たせば、証明書の申請手続きを行うことで、以下の優遇措置を受けられます。
支援内容(手続き場所) | 市内創業者 | 市外創業者 |
登録免許税の軽減措置(法務局) | ○ | × |
創業関連保証の特例(銀行・保証協会) | ○ | ○ |
融資制度に関する支援(日本政策金融公庫) | ○ | × |
神戸市内で創業する場合は、登録免許税が半額になる上に、日本政策金融公庫で融資を受ける際に優遇が受けられるのが大きな強みです。また、神戸市外・神戸市内を問わず、無担保、第三者保証人なしの創業関連保証が事業開始の半年前から利用できるようになります。ただし、利用に当たっては審査が必要です。
神戸で会社を設立する際に使いたい補助金4選
神戸で会社を設立する場合、条件に合えばさまざまな補助金を使うことが可能です。ここでは、利用できる可能性がある補助金を4つ紹介しますが、実際に使う際は専門家にも相談しながら手続きを進めましょう。
スタートアップ立地促進補助
神戸市では、兵庫県と共同で「スタートアップ立地促進補助」と称し、次の2つを含めた所定の条件を満たす事業者に対し補助を行う事業を運営しています。
- ・高度なテクノロジーを活用した事業の経験・実績、または知識・能力があり、今後成長が見込まれる3年以上の事業計画を有する者
- ・事業認定を受けてから6カ月以内に、神戸市内に当該事業所を商業・法人登録する意思のある者
出典:成長力あるスタートアップ向け制度 | 神戸市 企業進出総合サイト KOBE BUSINESS WIND
なお、利用に当たっては事業所開設前(契約前)のエントリーが必要になる上に、年度ごとに交付申請・実績報告をしなくてはいけません。サービスや商品の内容が分かる事業概要・計画書を準備し、エントリーを済ませましょう。
参照:成長力あるスタートアップ向け制度 | 神戸市 企業進出総合サイト KOBE BUSINESS WIND
神戸市商店街若者・女性新規出店チャレンジ応援事業(補助金)
若者(令和7年4月1日現在50歳未満)または女性が神戸市内の空き店舗に出店する場合、内装工事費等を対象に最大45万円の補助が受けられる制度です。兵庫県でも同様の制度が設けられているため、併用すれば最大90万円の補助が受けられます。
参照:神戸市:神戸市商店街若者・女性新規出店チャレンジ応援事業(補助金)
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金とは、小規模事業者(商業・サービス業は5人以下、製造業その他は20人以下)に向け、販路開拓や生産性向上のために行う取り組みを支援する補助金制度です。起業に当たって、以下の取り組みをする予定があるなら、ぜひ利用しましょう。
- ・チラシ・ホームページ作成、SNS運用などの広告宣伝
- ・ECサイト構築
- ・店舗の改装
- ・業務効率化のための設備導入
- ・イベント・展示会への参加
事業にかかった費用の3分の2について補助が受けられます(上限50万円、特定条件を満たせば上限250万円)。なお、利用に当たっては商工会または商工会議所の伴走支援が必要になるため、まずは相談してください。
参照:⼩規模事業者持続化補助金のご案内 | 補助金活用ナビ(中小機構)
ものづくり・商業・サービス補助金
ものづくり・商業・サービス補助金(ものづくり補助金)とは、革新的な新製品・サービスの開発や海外進出を目指す企業に対し、取り組みに必要な経費を補助する制度です。第20次公募(2025年7月25日17時締切)の場合「製品・サービス高付加価値化枠」と「グローバル枠」の2つが設けられています。「製品・サービス高付加価値化枠」の場合、以下の事業に対し、従業員数に応じた補助を受けることが可能です。
- ・機械装置・システム構築費(必須)
- ・技術導入費
- ・専門家経費
- ・運搬費
- ・クラウドサービス利用費
- ・原材料費
- ・外注費
- ・知的財産権等関連経費
参考までに、従業員数が5名以下の場合750万円が補助上限額となっています(下限額は100万円)。
参照:トップページ|ものづくり補助事業公式ホームページ ものづくり補助金総合サイト
まとめ
神戸に限った話ではありませんが、会社を設立するにはお金も時間もかかります。ある程度の出費が伴うのは致し方ないにせよ、精神的な負担は減らせるに越したことはありません。自分だけですべてを進めようとするのではなく、専門家や公的機関、補助金など、利用できる人や制度をフル活用しましょう。スムーズに手続きが進む上に、自身の精神的な負担も大幅に減らせるはずです。