会社を設立する上で、最初に必ず行う必要のある手続きが「法人登記」です。
手続きなどが難しい印象があるかもしれませんが、会社として認知され、個人の活動と会社の活動を明確に区別した上で事業を法的に開始するために、法人登記は非常に重要な意味を持っています。
登記を行うことで、契約の締結や金融機関に口座を開設することなどが可能になります。将来的に会社を発展させ、事業を拡大するために、法人登記の意義と重要性についてしっかりと理解しておくことが大切です。
本記事では、法人登記がなぜ必要不可欠なのか、法人ごとの登録の特徴、具体的なステップや必要な書類などについて分かりやすく解説していきます。
なぜ法人登記は重要なのか
ここでは、なぜ法人登記は重要なのかを、そのメリットも含めて解説します。
法人登記とは?
法人登記とは、会社という法的な人格が成立したことを社会的に明らかにするための手続きです。
「個人事業との違いと法人登記の意義」という点から見ると、個人事業は事業主個人と事業が一体であるのに対し、法人は事業主個人とは明確に区別され扱われます。この登記によって、会社は法律上の権利や義務の主体となって契約を結んだり、何かあった場合には、訴訟を起こしたりすることが可能になります。
その優位性、メリットについては、次の章で詳しく解説します。
法人登記を行うメリット
法人登記を行うことには、さまざまなメリットがあります。
まず、「社会的信用」の面です。会社として登記されることで、個人事業主よりも社会的信用が高まり、取引先や顧客からの信頼を得やすくなります。これは、事業を円滑に進める上で重要なポイントとなります。
次に、「資金調達」の面でも有利になります。金融機関からの融資や投資家からの出資を受ける際に、法人格を有していることが条件となる場合が多くあります。登記された会社であることは、企業の財務的な安定性や支払い能力を示す一つの指標であり、資金調達を優位に進めることができます。
さらに、「事業承継」においても法人登記は重要な役割を果たします。個人事業主の場合、事業主の死亡や引退があると事業を一度廃業し、後継者が再度開業の手続きをしなければなりません。法人であれば、株式譲渡などの方法を通じて、事業を後継者にスムーズに引き継ぐことが可能です。
これは、長年培ってきた事業を次世代へとつないでいく上で、大きなメリットといえるでしょう。
会社登記の種類とそれぞれの特徴
株式会社の登記
株式会社は、日本においてもっとも一般的な会社形態の一つです。
特徴は、出資者である株主と、実際に経営を行う取締役などの役員が分離している点です。株式を発行することで資金調達を行えるため、多くの人々から資金を集めやすく、大規模な事業展開に適しています。また、株主は出資額を上限として責任を負うため、個人財産へのリスクを抑えられます。
株式会社の登記のポイントは、まず、会社の基本的な情報(商号、本店所在地、事業目的、資本金など)を明確に決定することです。
次に、これらの情報をもとに、定款という会社の根幹となるルールブックを作成し、公証人の認証を受ける必要があります。
さらに、発起人や取締役などの情報を登記申請書に記載し、必要な添付書類とともに法務局へ提出します。また、資本金の払い込み手続きも重要な手続きの一つです。
これらの手続きを正確に行うことが、スムーズな会社設立とその後の事業運営の基盤となります。
しかし、株式会社の登記は透明性が高く信用を得やすい反面、設立や運営に一定の手間と費用がかかることも理解しておきましょう。
合同会社の登記、登記における注意点
合同会社は、「設立が簡便で運営に柔軟性のある形態」として近年増加している会社形態といえます。
株式会社と比較して、設立の手続きが比較的簡単であり、費用も抑えられる点が大きな特徴です。利益の配分やさまざまな物事の決定の方法などを、社員間で自由に決めることができます。これにより、スタートアップや少人数で事業を行う場合、特定の目的を持った事業を行う場合に適しています。
合同会社の登記における注意点としては、まず、社員全員の同意が必要となる事項が多いことが挙げられます。例えば、重要な事業計画の変更や社員の加入、脱退のときには原則として全社員の同意が必要です。
また、株式会社のような取締役会や監査役を置く義務がないため、組織設計は自由に行えますが、社員間の合意形成がスムーズに行えるような仕組みづくりが重要になります。
登記の際は、合同会社の基本情報に加え、社員の氏名・住所、出資額などを記載した申請書と、定款などを法務局に提出します。設立が簡便というメリットはありますが、将来の事業展開も考えた上での検討が必要です。
合資会社とは
合資会社とは、事業を行う人と資金を出す人でつくる会社です。事業を行う人は無限責任社員といって、もし会社が負債を負うことになった場合には、自分の財産を出してでも責任を負う必要があります。一方、資金を出す人は有限責任社員と呼ばれ、出したお金の範囲で責任を負います。
設立の手続きや費用は株式会社より簡単で資本金も不要です。決算の公告もしなくてよく、会社のルールも自由に決められます。
ただ、無限責任社員に相続が起こると税金が高くなることがあるほか、会社の責任が無限責任社員個人に及ぶこともあります。
また、必ず2人以上の出資者(無限責任社員と有限責任社員がそれぞれ1人ずつ)が必要です。最近は、無限責任社員の負担が大きいことから、新しく設立されることは少なくなっています。登記申請の際には、申請書と定款などの必要書類を法務局に提出します。
小規模な事業で社員間の連携ができ、お互いを深く信頼している場合に適している形態といえるでしょう。
会社登記の流れをステップごとに徹底解説
基本事項の決定から、法務局の申請まで、登録の流れを順に説明します。
1.会社形態や基本事項を決定する
法人設立をする際には、基本的な会社情報の項目が定められています。
【会社形態】株式会社、合同会社、合資会社、合名会社のいずれかを選択します。
【会社名(商号)】法人登記を申請する法務局内に、同じ商号の他社がいないかをチェックしましょう。
【事業目的】記載のない事業は実施できません。
【本店所在地】法人の拠点となる住所です。
【資本金】1円でもかまいませんが、創業時の運転資金に充当できますので、まとまった金額がよいでしょう。
【会社設立日】法人登記申請受付日が設立日になります。
【会計年度】一般的には4月1日から翌年の3月31日までですが、繁忙期を避けた時期に決算するのがよいでしょう。
【役員・株主構成】1名以上の取締役を置き、株主名簿も作成します。
2 法人用の実印を作成する
法人設立に際して作成する印鑑は、代表者印、銀行印、角印の3種類です。
3 定款を作成し認証を受ける
定款とは法人のルールを定めたもので、前述の基本的な会社情報の項目を記載します。定款は公証役場で公証人の認証を受けます。
定款の認証には、資本金によって3万円か4万円、または5万円がかかります。
4 出資金(資本金)を払い込む
発起人の口座(登記前は法人名義の口座を開設できないため)に出資金(資本金)を振り込みます。通帳のコピー(通帳の表紙・1ページ目・振込が記帳されたページ)をとっておきましょう。
5 登記申請書類を作成し、法務局で申請する
申請書類は法務局のホームページからダウンロードできます。
法人登記申請書に必要書類を添付し、法人所在地を管轄する法務局に申請します。郵送やオンラインでの申請も可ですが、初めてであれば、確認しながら申請できる窓口申請がおすすめです。
必要書類は「登記申請書」「登録免許税の収入印紙」「定款」「発起人議事録」「設立時代表取締役の就任承諾書」「発起人の印鑑証明書」「出資金(資本金)払込証明書」「印鑑届出書(法人)」「登記用紙と同一の用紙」などです。
会社登録に必要な書類とは
次に登録に必要な書類について、どんな意味をなす書類なのか、どんな状態の書類を準備するのかなどを見ていきます。
定款
前の章でも説明したように、定款は、会社の根幹となるルールを示したものです。公証人により認証を受けた定款を準備します。
設立時役員の印鑑証明書
設立時役員の印鑑証明書は、会社を新しくつくるときに、役員になる人の個人の実印が本物であることを証明する書類です。取締役会を設置しない場合、取締役全員の印鑑証明書が必要となります。
印鑑届出書
印鑑届出書は、会社の実印(代表者印)を法務局に登録するために提出する書類です。
個人が市区町村に実印登録するのと同じように、会社として法的に重要な印鑑を登録しておきます。
資本金の払い込みを証する書面
会社を設立する際に、出資者(発起人)がきちんと資本金の払い込みを行ったことを証明する書類です。通帳のコピー(通帳の表紙・1ページ目・振込が記帳されたページ)をとじておきましょう。
会社設立登記申請書
会社設立登記申請書には、商号や本店所在地などの必要事項を記入し、登録免許税額分の収入印紙を貼付します。
登記すべき事項を記した書面
商号や本店所在地、事業の目的などの重要事項を一覧にした書面です。書類に代えて、CD-Rなどでの提出も可能です。
設立時役員の就任承諾書
役員就任に対する承諾書です。代表取締役は、取締役の就任承諾書とは別に代表取締役の就任承諾書が必要となります。
発起人の同意書
発起人の出資額や割当を受ける株式数、資本金の額、株式発行数などが定款により定められていない場合に、発起人によりこれらを決定する書面です。
会社登記をスムーズに進めるための注意点
必要書類の作成だけでなく、準備にかかる期間や費用、そして会社の登録日についても考慮し登録を行います。スムーズに進めるための注意点をまとめます。
登録完了までにかかる日程を考える
会社登記の手続きは、法務局の処理状況などにより完了までに一定の時間を要します。一般的に、登記申請を行ってから完了するまでには、2週間程度の期間を見ておくとよいでしょう。
会社設立の日程を検討する際には、登記完了までの期間を考慮して、この日までに事業を開始したいなど、具体的な目標の日がある場合は逆算して登記申請の準備を始める必要があります。
設立準備には、先述したようなさまざまな手続きが必要となります。余裕を持ったスケジュールを立てることで、希望する設立日にスムーズに事業を開始できるでしょう。
書類、登録の有効期限を守る
何事においても、書類の有効期限と登録期間を守ることは非常に重要です。設立登記に必要な印鑑証明書は、作成日から3カ月以内という有効期限が定められています。この期限を過ぎたものは受理されず、再取得に手間と時間がかかってしまいます。
また、会社の情報に変更が生じた場合に行う変更登記には、原則として変更が生じた日から2週間以内という申請期限があります。
このように、各種書類には有効期限があり、登記申請には期限が定められています。事前に必要な書類とその有効期限、申請の期限を確認し、計画的に準備を進めましょう。
赤字でも納税義務がある
個人事業主の場合、事業の決算が赤字となり個人の所得が一定額以下であれば、住民税は課税されないことがあります。しかし、法人の場合は、たとえ決算が赤字であっても、法人住民税の「均等割」という税金を納める義務があります。
会社設立後の資金計画は、事業が軌道に乗るまでに時間がかかったとしても、この均等割の納税があることを考慮しておく必要があります。
専門家への依頼
これまでの章でも分かったように、会社登記の手続きは煩雑で困難なことも少なくありません。そのため、司法書士や行政書士といった専門家に依頼することも有効な手段となります。
専門家は、書類作成の代行や法務局とのやり取りをスムーズに進めてくれます。これにより、時間や手間を大幅に削減できるだけでなく、不備や遅延などのリスクを減らすことも可能です。
ただし、専門家への依頼には費用が発生します。専門家へ依頼する場合は、その費用を予算に含めることを忘れないようにしましょう。
費用対効果を慎重に検討し、会社の状況や必要に応じて専門家のサポートを検討するとよいでしょう。
まとめ
法人登記は、単なる手続きではなく会社が社会的な信用を得て、事業を法的に展開していくための基盤となる重要な手続き、プロセスといっても過言ではありません。会社の形態によりその方法や作業は変わりますが、その重要性は変わりません。
会社名や事業目的、所在地といった基本情報の決定に始まり、必要書類の準備や申請手続きを経て法人としての活動が開始されます。必要な書類も詳細を記載しましたので、参考にしながら準備を進めてください。
もし不安な場合は、司法書士などの専門家に相談することも有効です。会社法人センターは、全国最安の8,360円(税込)にて会社設立手続きを代行いたします。
書類や電子定款も司法書士と行政書士が作成するため、安心してお任せいただけます。他サービスでありがちな、顧問契約の強制もございませんので、ぜひお気軽にご相談ください。